傾国
いつもの日々。
そこにはいつもの二人がいる。
皇城に入っても、結局はそんな日々が続いていくのだろうと、礼は思っていた。
ずっと後になって、礼は気づいた。
あの皇太子と目を合わせた時、彼の目に浮かんでいた表情の、意味。
彼と自分の母の共通点に。
どちらも、堪え忍ぶということに慣れ、だから疲れきっていたのだということに。
あの時自分は、自分が接したいと思ったままに皇太子と接した。
その態度が崔延にどう捉えられたのか、自分には分からなかった。
曲者を見つける目はあっても、情の機微を見る目まではない。
それは、ある意味では揮祥にも葉慶にも言えることだった。
そのために『いつもの日々』が崩れていったのだということに、礼が気づいたのは、ずっと後のことだった。