傾国



うっすらと空が白み始めた頃だった。


ドン、ドン、という太鼓の音に、待っていた人々がざわめきだした。


門の向こうから、人の足音が近づいて来る。


礼は素早く門の正面に陣取った。


邪魔にならぬよう提灯を消し、畳んで懐にしまう。


代わって割札を取り出したところで、門が重い音をたてて開いた。



「これより、皇太子殿下付き武官の試しに及第した者を発表する」



出てきた四人の武人の一人が、高らかにそう言った。


門が再び閉ざされる。


二人が篝火の横で槍を持って警護に立ち、二人が分厚く巻かれた紙を開いて門扉に貼っていく。



ややあって、人々がそれぞれに声をあげ始めた。


歓喜の声。


悔しげな呻き。


まだ番号が出ない、と不安そうな呟き。



< 50 / 74 >

この作品をシェア

pagetop