傾国
うっすらと空が白み始めた頃だった。
ドン、ドン、という太鼓の音に、待っていた人々がざわめきだした。
門の向こうから、人の足音が近づいて来る。
礼は素早く門の正面に陣取った。
邪魔にならぬよう提灯を消し、畳んで懐にしまう。
代わって割札を取り出したところで、門が重い音をたてて開いた。
「これより、皇太子殿下付き武官の試しに及第した者を発表する」
出てきた四人の武人の一人が、高らかにそう言った。
門が再び閉ざされる。
二人が篝火の横で槍を持って警護に立ち、二人が分厚く巻かれた紙を開いて門扉に貼っていく。
ややあって、人々がそれぞれに声をあげ始めた。
歓喜の声。
悔しげな呻き。
まだ番号が出ない、と不安そうな呟き。