傾国
冬縁









皇太子付きの武官を広く求める。


掲げられた高札の文言に、辻の人々はざわめいた。



(ぎょう)国の皇都・瑞翔(ずいしょう)に、その日も朝から雪が降っていた。


冬の終わりには、皇城に仕える文武両官を採る試しがある。


だが毎年全ての官を採るのではなく、欠員の出た庁が秋に募集をかけるのが常であった。


雪の時期に募集がかかるなど、異例のことだ。



「……皇太子付きだとよ」



「人なんか集まるのかい」



ざわめきの中に、ぽつぽつと憎々しげなささやきが混じる。


寒冷な暁国では、皇帝の器量は自分たち国民の生死に直結するものだ。


だが即位の前から、彼らの間には次期皇帝への不信感があった。




< 6 / 74 >

この作品をシェア

pagetop