傾国
冬縁
皇太子付きの武官を広く求める。
掲げられた高札の文言に、辻の人々はざわめいた。
暁国の皇都・瑞翔に、その日も朝から雪が降っていた。
冬の終わりには、皇城に仕える文武両官を採る試しがある。
だが毎年全ての官を採るのではなく、欠員の出た庁が秋に募集をかけるのが常であった。
雪の時期に募集がかかるなど、異例のことだ。
「……皇太子付きだとよ」
「人なんか集まるのかい」
ざわめきの中に、ぽつぽつと憎々しげなささやきが混じる。
寒冷な暁国では、皇帝の器量は自分たち国民の生死に直結するものだ。
だが即位の前から、彼らの間には次期皇帝への不信感があった。