傾国


葉慶は怯まない。


彼女の返答によっては、柳は容赦なく及第を取り消しにするだろう。


それが分かっているからこそ、自分から退くことは絶対にしないのだ。



「師の薬記にもありますとおり、薬草の中には、種類は違ってもほぼ同じ薬効を持つものがたくさんあります。高価な薬草が手に入らなくても、安価な薬草を調合したりすれば必ず代替薬が作れるはずです。私は、そういった〈使える〉医薬術を見出だしたいのです」



柳の表情が変わった。


ずっと浮かんでいた呆れの色がかき消されたようになくなり、代わって瞳が興味をそそられたように光る。



その瞳を礼は知っていた。


未知の分野を代表する存在の自分を、質問責めにする時の揮祥と葉慶の瞳だ。


純粋な、興味。好奇心。


この人物は自分の知らない何を秘めているだろうと、心を躍らせている人間の瞳だ。



「代替薬を作るには、何をすれば良いと思う?」



「まずは、食養生について調べます。安価な食品を組み合わせるだけではどうしようもない場合についてだけ、薬草の調合を調べるべきだと思います。効率を優先して、食養生にしろ代替薬にしろ、効果が確認できたものからどんどん街医者に伝えていけば……」



「及第ね」



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