傾国
礼は、そう告げた柳の瞳に歓喜を見た。
「それだけ目標に至る道筋を具体的に描けるあなたなら、きっと平民の医薬術というのも見出だせるわ。お母上には私が話すから、行きなさい。学舎でまた話しましょう」
この医女副長は、今まで助手に恵まれていなかったのではなかろうかと礼は思った。
志を持つ若い医女の存在は、彼女にとって大きな助けになるだろう。
何か言いたげな母に背を向け、葉慶がこちらへやって来る。
「お前、柳師に見込まれたとか調子乗るなよな!」
「乗りゃしないけどさ、まあ医女副長様直々に『及第!』って言ってもらったのは私くらいだろうな!」
相変わらずなやり取りとは裏腹に、揮祥は葉慶の頭をぐしゃぐしゃに撫で回し、葉慶は兄にするような気安さで揮祥に飛びついている。
礼も一緒になって、喜びを爆発させている葉慶の頭をとにかく撫でてやった。
「うっわ、けっこう人集まって来たな。二人とも、ここにいるってことは及第したんだろ? ならやることとっとと済ませちゃって、飯屋で祝杯あげようぜ!」
「お前な、それ皇城の医女がする言葉遣いじゃないぞ。あと酒は駄目だ、馬鹿になる」
かたいこというなよなーとまだぶら下がっている葉慶をはがそうとしながら、揮祥がまた後でな、と手を振った。
振り返して、礼は招徳門の中に入った。