傾国
門の中は喧騒に満ちている。
声を張り上げて及第者を誘導する官吏たち、同じ塾の同窓なのか喜びを伝えあう若者たち。
自分が入っていったことで新たに起こるざわめきの中身を、礼は努めて平淡な顔で聞き流した。
「おい! あの肌……」
「本当に目が橙色してるぜ」
「あれでよく及第したな――丹賎が」
慣れている。
憤ったところで何が変わるわけでもない。
「乙八の、青礼です」
「あー……割札は……本物だな。よし、お前は白陽館の蘇教官の班だ」
割札と引き換えに紙を数枚を渡され、門内の白陽館という建物へ向かう。
すでに七、八人の青年が集まっていたが、彼らは他の及第者とは違った驚きを持った目で礼を見てきた。
「もしや……あなたは、青礼殿では?」
「はい」
「やっぱり! 弓射の青殿だ!」
「及第したんですね、おめでとうございます!」