傾国
彼らは皆、皇立弓射場に通っていた若者たちだった。
弓射場の記録に名を載せていた者もちらほらいる。
どの青年も、憧れの人物への好意を持った態度で接してきて、礼は何だかくすぐったかった。
「白陽館、弓射部で及第した者、整列」
太い声が場を静め、青年たちが従ってすぐさま列を作った。
「本日よりこの二十人の教官を務める、蘇俐泰だ」
低いが驚くほどよく通るその声に、まず礼は圧倒された。
黒と緋の短甲に藍色の上衣を重ねて細鎖の帯を締めるのは、高位の武官の正装だ。
加えて、鎖帯の上にさらに金銀の組緒を巻き、柄に革紐を垂らした大小二種類の刀を帯びて、琥珀の珠のついた綬で白いものが交じる髷を纏めている。
頬の削げた精悍な顔つきは、百年変わらぬような鋭さを湛えた、本物の戦いを知っている将軍のそれだった。