傾国



「暁は天の恩と地の恵みを受けた、健やかで素晴らしい国である。

この恩恵はひとえに、祖神の尊き血筋を守ってきた皇帝陛下の御身に依っている。

本日より我々が御守りするは、次の神君たる皇太子殿下だ。

多くの官は学舎で学んだ後職務にみあった学問をさらに数年かけて修めるが、皇太子付武官を務める諸君は、学舎と並行して明日よりさっそく武官の鍛練が始まる。


励め! 己に課せられた責を常に自認し、その忠と命とをもって皇太子殿下の盾となれ!!」



応、と檄に応える青年たちを、将軍が満足そうに見渡す。



その目が、礼を見留めて揺れた。



慣れている。



丹の官はまずいない。


まして、皇城の武官には。


大丈夫だ、慣れている。


『なぜお前がここにいる』と非難する目には。


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