傾国



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同じ年だというのに、なぜこうも自分と彼とは違うのだろう。


崔延は欄干に手を置いて、ふっと息を吐き出した。


元は内堀だったこの橋の下は、かつて城を増築した時に水が抜かれ、今では兵士たちの鍛練場として使われている。


崔延は昔から、この橋の上で兵士たちの鍛練を見るのが好きだ。



皇帝のただ一人の子として、学問も武芸も一通り修めた。


けれど崔延の武は、あくまで『芸』でしかない。


型を身につけ体捌きを覚えはしたけれど、実際に人と切り結ぶことなど想定されていない彼の武芸は、人を殺せる類いのものではなかった。


だからだろうか、ひりひりするような緊張感の中にいる兵士たちの鍛練に、我を忘れて見入ってしまう。


木剣だけでなく、時には白刃までもひらめく。


弓弦が鳴り、蹄の音が響く、自分が決して立つことのない空間。


そこに立つ者に憧れるのは、自分が男である確かな証だ。


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