傾国



今上の一粒種、皇太子の崔延は、今年十五歳になる。


政に関心を持たず、立太子後も朝議にほとんど顔を出さない。


気力の無い暗愚の者として、民の間に知られていた。


期待外れだった、と、集まっていた人々は散り始めた。








残ったのは、静かな面持ちで高札を見つめる少年がひとり。


年の頃は十四、五。


小柄だが、立ち姿には隙がない。


精悍なその顔の中で、やがて、理知的な瞳が奇妙な光を帯びた。




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