傾国




「らーい!!」



自分を呼ぶ声に、高札を見つめていた礼は振り返った。


橋の向こうから、こちらは大柄な少年が走ってくる。



薬種屋の息子の曹秀(そうしゅう)は、礼の幼馴染みだ。


下級とはいえ礼の父は貴族なので身分は違うものの、物静かな礼と豪胆な曹秀は妙に馬が合っていた。



「ああここにも出てんのか。俺の家の真ん前にも出てるんだよな、高札」



のほほんと言った曹秀は、そこでぽんと礼の肩を叩いた。



「で? ――行くんだろ、お前」



礼は、幅広の指輪をはめた右手をぎゅっと握った。





「ああ」



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