You are my light
それからdollは姿勢を正して、私を真っ直ぐに見つめる。
「私は、貴方のことを報告するつもりはありません」
「でも、そんなことをしたらあなたが……」
命令に従わなかった人たちが無情に殺されていく。
……BCMにいる人間なら理解しているはずなのに。
それでもdollは微かに首をふった。
「貴方のことを報告しないのは、貴方のためではありません。私のためです。
私は…見てみたいのです。自分と同じ、いえ、それ以上の絶望を味わった貴方がどれだけ変われるのか……それが見たいのです」
「doll……」
そう言った瞬間、何かが壊れるような大きな音が響いた。
扉の向こうががやがやと騒がしくなる。
「どうやら、貴方の仲間が来てしまったようですね」
dollは手早く紅茶を入れていたカップやポットを片付ける。
そして可愛らしいバックにしまった。
……自分のものだったのか。
「残念ですが、ここでタイムリミットのようです。もう少しお話したかったのですが、私がここにいるといろいろと厄介ですから」
そう言ってdollは鞄を持ち、この部屋にあった窓を開けた。
ふわり、と風でカーテンとdollの髪が揺れる。
「最後に……私は貴方のことを上に報告するつもりはありません。しかし、バレるのは時間の問題です。
……気を付けて下さい」
「えぇ、分かってる」
「では、」
「待って」