You are my light
奏は静かに音を見ている。
「それは"満月"としてのお願いかな?」
平淡な声でそう聞く音の前で、私は乱暴にウィッグを脱ぎ捨てた。
サラリと月光を纏った銀の髪が私の周りを包む。
纏った雰囲気は"満月"なんかじゃない。
「"白猫"が、全国No.1ハッカーの"Jupiter"に依頼してるの」
じっと音の目を見つめる。
ふ、と無表情だった音は口元を少しだけ緩めた。
「いいよ、その依頼受けてあげる。その代わりに、僕に見返りを頂戴?」
「見返り?」
そんなことを言われたのは初めてで、私は少し目を見張る。
それはかな兄も同じみたいで、驚きで口をポカンと開けていた。
見返りって……何を求められるんだ。
ちょっと恐怖を感じながらも私は頷いた。
そうだなー、と言いながら笑っている音兄。ちょー怖い。
「じゃあ、」
ごくり、と喉が鳴る。
「何かあったとき、奏よりも先に僕に教えてよ」
…………は?
「え…、そんなことでいいの?」
想像していたことと180°違う見返りに拍子抜けして音兄を見る。
「"そんなこと"でいいんだよ」
優しく目を細める音兄。
「……うん、分かった」
「おい待て、そこ分かるなよ!」
激しく突っ込みを入れるかな兄を一睨み。
捨てられた子犬のような目で見つめられたけど、徹底的に無視しておいた。