You are my light
私も向こうにいたとき、呼吸の仕方や気配の消し方など基本的なことを一番初めに教えられた。
体術や武器を使った戦いはそのあとだ。
いくら戦闘力が強くても、その前に相手に気づかれてしまえば意味がない。
逆にいえば気配や足音など、自分を消すことに秀でた人ならいくらでもそのチャンスがある。
だから、そういう人の方が重宝されてたな。
気配が探れないなら、自分の勘を信じてみようか。
確か、音兄の情報通りならこっちが広間になっていたはず。
足音を立てないように闇に紛れてそっちへ移動する。
中は薄暗く、ひんやりとした空気に満ちていた。
よく見ると、中央に二人の人影が……ビンゴだ。
「久しぶりっスね」
聞こえてきたのは、私よりも年上の男の子の声。
「そうね……私を捕まえにきたのかしら?」
そう言いながら、私は後ろ手で扉を閉めた。
これで、この中は閉ざされた空間になった。
「それが、若様の命令だ」
感情の見えない無機質な声が部屋に響く。
「……変わらないのね、二人とも」
小さな窓から、細い月明かりが二人を照した。