ベイビー、君は僕のもの
デートとそれから
「……紅林さん?」



掛けられた声にハッとして、わたしは顔をあげた。

きょとんとした表情で、津川くんがわたしを覗き込んでいる。



「どうしたの? もしかして、具合でも悪い?」

「あ、ううんっ。なんでもない」



首を横に振って笑ってみせると、津川くんは「そ?」と言って再び前に向き直った。

……いけない。今は、津川くんと一緒にいるのに。

なのにずっと、2日前のことが頭から離れない。



『……きらい、かなちゃんなんて、大嫌い……っ!』



わたしが、そう言ったとき……かなちゃん、今まで見たことないような、傷ついた顔してた。

あのときの彼の表情を思い出しながら、そっと、首筋に貼った絆創膏を指先でなぞる。

その下に隠れているのは、あの日彼がわたしにつけた、赤い痕。

──かなちゃんは、これをどんな思いでつけたのか。それすらも、わたしにはまったくわからなかった。
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