ベイビー、君は僕のもの
思わず顔をあげて見た先の彼は、やわらかく微笑んでいた。

一筋流れたわたしの涙を、そっと、指でぬぐう。



「……俺、月乃がすきだよ」



──その瞬間。本気で、呼吸が止まった。

かなちゃんの手が、首筋の絆創膏に触れる。

少しの痛みをともなって、赤い痕が外気にさらされた。



「……“これ”は、俺の嫉妬と独占欲のかたまり」

「……え……?」

「本当は、せめて月乃が18歳になるまで、手を出すつもりなんてなかったんだ。……けど、もういいや。もう、限界」



話しながら首筋の痕をなぞるかなちゃんの手に、からだがだんだんと熱を持ってくる。

見上げるわたしの視線に気付いたのか、彼はイタズラな表情で、顔を覗き込んできた。



「言ってよ、月乃。……俺が堂々と手を出せるように、ちゃんとした言葉で、受け入れて」

「……ッ、」



──ああ、もう、かなちゃんは知ってるんだ。

いつもあんな態度をとっていても、わたしがかなちゃんを想ってること、知っててくれてた。



『ッ、わたしはいつまでも、かなちゃんのオモチャじゃない……っ!!』



……自分に、自信がなくて。

だから、かなちゃんのことを勝手に悪者みたいにすることで、安心してた。

──本当は、1番大切なのに。誰よりも、かなちゃんがだいすきなのに。
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