ベイビー、君は僕のもの
「ど、して……」

「え?」

「どうして、わたしを選んでくれるの……?」



頬に涙の筋を残したまま、彼を見上げてそう呟く。

それを聞いたかなちゃんはまっすぐにわたしを見つめ、小さく微笑んだ。



「月乃は、俺が初めて、守りたいって思った存在だから」



その、どこまでもやわらかくてやさしい表情に、わたしは思わず息をのむ。

かなちゃんはそっと右手を伸ばし、わたしの頬にあてた。



「俺は月乃のためなら、どんなことにも耐えられる自信があるよ。……ためらいなく、人を陥れるようなことだってできる」



言いながら今度は、両手で顔を包み込む。

真剣な彼の瞳が、わたしを射抜いた。



「……誰にも汚させない。こんなふうに弱い月乃は、俺だけが知っていればいい」


「まだ赤ん坊だったおまえが、ちっさい手で俺の指を握りしめたときから、誓った」


「月乃は俺が、守るよ」



──ああ、こんなの、最高の殺し文句だ。

1度は止まりかけていた涙が、再び溢れだしてくる。

……わたしはかなちゃんのもの。かなちゃんはわたしのもの。

それはきっと、昔から変わることのない、わたしたちの約束だった。
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