ベイビー、君は僕のもの
名前が『かなで』。だから、かなちゃん。

そんな子どものような呼び名を、高校2年生になった今も続けている。


わたしはお茶碗とはしを持ちつつ、当たり前のように我が紅林家の食卓についているかなちゃんを、じろりと睨んだ。



「どうして、こんな朝早くからかなちゃんがうちにいるの」

「和美と亘くん、今日は今朝早くからいないんですって。だから、私が奏くんを朝食に誘ったのよ」

「だからって……っ」



わたしの質問にあっさり答えたお母さんに、勢いよく顔を向ける。

お母さんの言う『カズミ』と『ワタルくん』っていうのはかなちゃんのご両親のことで、うちのお母さんとお父さんの親友だ。

かなちゃんは「おいしいです」なんてニコニコ言いながら、次々に目の前の和食を平らげていく。



「あらあら、やっぱり男の子はたくさん食べてくれていいわねぇ。遠慮しないで、どんどん食べてね」

「はい」

「(そこは遠慮しろよ……!)」



口悪く心中で思いながら、多少乱暴にはしをテーブルに置いて「ごちそうさま」と呟いた。

使い終わった食器を持って、椅子から立ち上がる。
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