ベイビー、君は僕のもの
いつもこんなふうに、マイペースで自分勝手なかなちゃんだけど……こんな性格で、見た目はかなりかっこいい。

すらっと高い身長に、ワックスで無造作に流した黒髪。

目は大きすぎず小さすぎず切れ長で、鼻筋が通った美形。

しかも有名私立大学の院生だけあって、頭だってすごくいいのだ。

頭脳はともかく、そんなイケメンが赤いスポーツカーに乗って颯爽と現れたら、校門前は女の子たちの黄色い歓声にわき上がり、ケータイカメラのシャッター音があちこちから聞こえてくる。

……まあこれは、つい2週間ほど前にわたしが実際に体験した話なんだけど。


そしてそれを自覚しているのかいないのか、かなちゃんはいつだって、わたしにやさしい笑顔を向ける。

そんなわけで、ただ彼と幼なじみというだけの見た目も中身も平凡なわたしは、嫉妬や羨望の視線を一身に受けてしまうことになるのだ。



「……わたしの送迎なんてわざわざしなくていいから。かなちゃんは、自分の学校の時間まで優雅にくつろいでなよ」

「うん、でも、このままだと月乃遅刻じゃね?」

「へ? 何言ってるのよ、まだ全然余裕な時間じゃない」



玄関に置いてある、お母さんの趣味のアンティーク時計を見ながら、わたしは言った。

うん。やっぱり、まだまだ全然余裕。
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