ベイビー、君は僕のもの
「今日もすごかったね、奏さん人気」

「万里奈……おはよう」



朝の教室。

後ろから声をかけてきた友達の万里奈に、げっそりした様子で挨拶をする。

彼女もまたおはよ月乃、と返して、わたしの前の席に座った。

身体を横に向け、おもしろそうにわたしの顔を覗き込んでくる。



「あ~あ、朝から疲れきった顔」

「……だって、かなちゃんがわざわざ校門に車つけるから……」

「あはは。そうとう過保護だよね、奏さんも」



苦笑しながら、万里奈は窓の外──今はもう落ちついている校門のあたりに、目を向けた。

わたしは机の上で頬杖をつき、はぁっとため息を吐く。



「……もしわたしに彼氏ができない理由があるとすれば、それは絶対かなちゃんのせいな気がする」

「うーん、どうかな」

「なにさー。どうせ、わたしの性格の問題ですよっ」

「そんなこと言ってないってば」



また苦笑して、万里奈は拗ねるわたしの頭をなでなでした。

その小さな手の感触を受けとめながら、ふと考える。


──もしわたしが、万里奈みたいなかわいい性格だったら。

今みたいにかなちゃんに振り回されることもなく、もう少し、違った態度で接することができていたのかもしれない。

こんなとき不意にそう思ってしまうのは、やっぱり自分の、強がりでかわいげのない性格を自覚しているからで。



「……かなちゃんのばーか……」



どうしようもなく、なんだかやりきれない気持ちになってしまったわたしは。

今はここにいない彼に、小さく悪態をついた。
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