青い糸【完】









「あ、もうこんな時間じゃない。今日の夜は予定が入っててね」

「...そうですか」

「......じゃあね、翔真。梨咲乃」

「「......」」







最後にそう言って、“あの人”はあたしたちの横をすり抜けて行った。

その瞬間に香ったのは、“あの人”のつける香水の匂い。
似合わない、優しげな匂いだった。






────“あの人”がいなくなった後、あたしと佐伯は数分間なにも話さなかった。
少しも動かなかった。



やがて空には、小さな星が無数に広がっていた。

半月が、真っ暗な夜空を照らす。
















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