青い糸【完】









「...いいんじゃない」




“死ねばいい”と、心から思った人なんて、きっと少ないんだろう。






色んなことを知って、母親と別れたときより大人になった今。


“死ねばいい”と、心から思ってしまっている自分に
残酷な過去に

怯えながら、震えながらずっと抱えてきた悲しみに
大人になった佐伯は、涙を流さずに



笑顔で隠しながら生きてきたんだろう。








「......っ」




あたしが返事を返すと、その瞬間に
雨音に紛れながら聞こえてきた、佐伯の声。


鼻をすする音に、時々漏れる嗚咽。
身体の震えは止まらずに。










< 85 / 307 >

この作品をシェア

pagetop