スロウダンス

ファーストコンタクト

腕時計を見たら、会議が始まる5分前。

ドアの前に立つと、中からボソボソ話し声が漏れていたので、もう何人か集まっているようだった。

片手にお盆を移して、空いた右手で2回ノックした。

15人分のお茶を片手に受け、左手はプルプルしている。思い切ってノブに手をかける。

(よーし、勢いをつけて一気にドアを開けなきゃ)

ノブを回す手に力を入れた時、後ろから大きな手が私の手の上に重なった。

(えっ!!!)

驚いて振り向こうとすると、斜め上から

「危ないから、そのままで」

と声が落ちてきた。

重なったまま、ドアは簡単に空いた。

でも、私は思いもよらない出来事に身を固くしてしまった。

「早く入って」

後に立つその人は、ドアを押さえてくれていたみたいで、私はハッとした。

「すいません!」

前を向いたままお辞儀をして、慌てて一歩進み出た。

少し遅れてドアが閉まる音がして、横を風が通り抜けた。

正木部長がこちらに顔を向けて、

『おっ』という顔をして、手招きをする。

「相良君、どうぞここに座りなさい。」

(えっ?相良・・・)

「はい、では失礼します」


< 11 / 35 >

この作品をシェア

pagetop