スロウダンス
あれから1週間。

特に何事もなく、日々は過ぎていった。

強いて挙げるとするなはらば、私の場合は、客先の担当者変更があり、その人がとっーても面倒臭い事。

母からは、近所に新しく家が建ち始めたとか、最近、かわいい柴犬の赤ちゃんが散歩しているとか、たわいもない報告が幾つかあった。

社内では、相良部長の噂は途絶える事無く、

1.既に何人かの女性が玉砕しているらしい・・・

2.新規部署が設立されても人選で揉めているらしい・・・

3.今回の相良部長のヘッドハンティングは、社長と常務の独壇場で、専務や特に営業部の人達は面白くないようだ・・・等

本当か嘘か分からない情報を森先輩経由で耳にした。

(そういえば、あれから社内でも相良部長の姿を見かけなかったな・・・)

『RRR ・・・』

生産管理部の電話が鳴った。

「はい、NPコスメティックス、藤曲です。」

『あっ、藤曲さん?サプライ・ユニバース社プランナーの安東だけど』

(来たぁー!!!面倒臭い担当者!)

平常心を装う。

「いつもお世話になっております。」

私の言葉を無視するかように、

『で、生産日の繰り上げ出来た?』

(またか、同じ内容を毎日毎日・・・)

思った言葉をぐっと呑み込む。

「・・・先日も申し上げた通り、繰り上げの調整は出来かねます。菌検査に最低3日置かねば、充填(じゅうてん)出来ませんので。」

『だったら、充填した当日に出荷すればいいでしょうが、頭を使いなよ~』

(無知なのはあんたでしょうか!!)

ムッとしたが、ここで乗ったら思うツボだ。

「御社にサンプルを発送して、出荷判定の合否を頂かねば・・・」

『じゃあ、今の状況をどうするんだよ?品切れ間近だぜ?藤曲さんが上司に説明してくれるの~?』

(・・・もともとは、売れ行きの予測を読み違えて、注文書をリードタイムを切って発行したくせに)

「それは・・・、必要であれば、」

言い掛けた時、後ろから、チョンチョンと肩をつつかれる。

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