スロウダンス
カーテンから零れる朝日で自然と目が覚めた。

傍の携帯に手を伸ばして時刻を確認すると、6時半少し前だった。

遅れてアラームが鳴り、すぐに止める。

頬に触れば、微かに濡れていた。

人差し指で跡を拭い、唇に近付ける。

「しょっぱ・・・」

ベッドから半身を起こして、髪をくしゃくしゃと掻き回した。

・・・今の時期にあの夢を見るのはなかなか無い事だ。

毎回、後ろ姿を追う私。

(また振り向いてくれなかったな・・・)

自然と溜め息がもれる。

『ドタドタドタ・・・!!!』

階段をかけ上がる音がしたと思えば、ドアを勢いよく開け放たれた。

「おぉぉっ!!」

びっくりして変な態勢で声を出した。
そんな私をまるきり無視して、

「智子(さとこ)、冬休みは終わりよー。ぼさっとしてないで、早く仕度しなさい。」

言いながら母はずんずん部屋に入り、昨日の乾いた洗濯物を机の上に置く。

「わ、わかってるよー。ちょっとぼーっとしちゃって」

横目でチラリと見ながら、

「アンタはいつもぼーっとしてるよ。仕事初めなんだから、今日ぐらいシャキっとしなさいよ!」

言い放つと、上がってきた時と同じ調子で母は階段をドタドタ降りていった。

(アナタが朝から120%ハイテンション過ぎるんだよ・・・)

やや、げんなりしつつ、私はベットの上の布団を横に避け、猫のような伸びをして、パジャマのボタンに手をかけた。


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