スロウダンス
『ピロリン♪』

社内メールが1通届いた。

from 総務部 森
sub ランチ
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お疲れ!
仕事はどう?

久々に今日は
外にランチ行かない?

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森先輩からだ。そういえば、仕事が忙しすぎて、お昼は自席で取っていた。

先輩ともゆっくり話してないなぁ…

私はすぐさまOKの返信をする。

またすぐに返信が戻ってきて、会社近くの洋食屋で待ち合わせる事になった。

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『カラン』とドアベルを鳴らして店に入ると、奥の二人がけのテーブルで森先輩が手を振っていた。

会社すぐの洋食屋『山猫食堂』は、ランチ時は、いつも賑わっていて満席だ。

「お疲れ様~。藤曲ちゃんも本日のランチで頼んじゃったから。牡蠣フライだって。」

「ありがとうございます。牡蠣フライ好きなんで。」

お礼を言いながら、椅子に腰をかけると、

「いよいよ明日から新部署だね、こうして一緒にお昼する事も無くなるのかしら?」

眉尻を下げながら、森先輩が質問する。

「う~ん…。相良部長とは今後の事は詳しく話してないんですが、やっぱり外へ行く機会は増えそうなんですよね。」

「そっかぁ。寂しいわぁ…イジル子がいなくなるのは。」

「…私はイジラれ役ですか。」

唇を尖らせると、森先輩は私の反応を見てニヤニヤしている。

「お待たせしましたぁ~本日のランチです。」

ぽっちゃりした女将さんが、狭い店内を縫うように進んで、テーブルにランチを運んでくる。

「わぁ♪美味しそう、いただきま~す。」

手を合わせて、熱々の牡蠣フライにかじりつく。

サクッとした歯応えのすぐ後に濃厚な味が口に広がって、美味しさのあまり溜め息が出る。

それから二人で黙々と箸を進めて、食後の珈琲が運ばれた時、ミルクを垂らした珈琲の渦を眺めながら、森先輩がポツリと話始めた。


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