スロウダンス
会社が終わって、駅から自宅迄の帰り道、森先輩から昼間にもらった紙をあらためて見てみる。

佐藤歩(25歳・設計技術部)・・・心を病んで、2回休職している。彼は、復職してからも勤務中ににふらりと姿を消す事が度々。

渡邉隼人(30歳・開発部)・・・二年前、大手化粧品会社より転職。実績を買われての採用だったが、1度も開発処方を提出していない。とにかくやる気が見られない。

金子寿々加(25歳・経理部)・・・数字への執着がすごく、強気で人を寄せ付けない性格から、マルサの女の異名を取る。
顧客と喧嘩して、取り引きが無くなった過去が。

英慎太郎(25歳・製造部)・・・現場経験が長く、仕事には真剣に取り組んでいるが、短気な性格で度々内外で喧嘩沙汰を起こす。

吉原香織(22歳・営業部)・・・仕事はゆっくりだが丁寧。営業女子から嫌がらせを受けている。

森先輩が総務部ならではの情報網で収集してくれた情報を見る限り、はっきり言ってチームワークが得意な人達…ではないようだ。

この中で、唯一接触があるのは、製造部の英(はなぶさ)君ぐらいか。

(ああいった手前、今更『仲良く仕事出来る気がしない』…なんて弱音吐けないよなぁ。)

思い悩みながら歩くうちに、柔らかい光が足元に届いて、家に着いた事に気が付いた。

喫茶・軽食『藤曲写真館』の灯り。
一風変わった名前は、写真館をやっていた頃の看板をそのまま使っている。


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