スロウダンス
書類を手に会議室にあるフロアに着くと、正木部長が会議室から出てくるところだった。

「正木部長、こちら頼まれた書類です。」

「あぁ、悪かったねぇ。」

正木部長が、書類を受け取る。

「あれ?どちらへ?」

「んー、実は午前中も会議室使用していたみたいなんだが、お茶の容器がそのままなんだよね、まったく・・・。新しく出し直してもらうように営業部の女の子に言おうかと。」

(・・・多分、営業部の女の子達は、お昼休み時間いっぱいに使うから、まだ席に戻ってないだろうなぁ。)

「じゃあ、私がお下げして新しいのを出しますよ」

正木部長は、片手をすまなさそうに挙げた。

「そっか、悪いね。15人分宜しく頼むよ。社長が外へご飯に出てて、10分くらい遅れるみたいなんだ。まだ誰も来てないから。ゆっくり準備していて大丈夫だよ。
その間に僕は開発部に依頼されている容器の見積単価を出してくるよ。」

言うなり、足早に正木部長は横をすり抜けて行った。

会議室をチラリと覗く。確かにまだ誰も来ていない。

私は、給湯室からお盆の上に人数分のカップを置いて、お茶の仕度を始めた。

< 9 / 35 >

この作品をシェア

pagetop