嘘と煙草と君とチョコレート
話しをしたのはそれだけで、
その後は二人共黙ったままステージを見ていた。

しばらくすると林さんは満足したのか、
どこかへ歩き出した。

私は後を追わず、ステージを見続けた。

急に涼しくなった左腕を押さえ
心臓のドキドキを落ち着かせていると、
誰かに背中をつつかれた。

どうせ優希が茶化しに来たんだろう。

緩んでいた口元を引き締め振り返ると、
林さんがいる。

「へぇっ!?」

林さんは驚いている私を見てクスッと笑い、
また歩き出した。

「ねぇ、何!?」

必死で追いかけるが、
林さんの歩くペースに追いつけず、
小走りになってしまう。
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