東京ロマネスク~冷酷な将校の殉愛~《完》
青い月の光の中。



大きな羽根を広げ、鳥居に佇む異形の姿が見えた。


俺は拝殿の格子の扉から鵺の姿を凝視する。


鞘から『村柾』を抜き、退治に行こうと腰を上げたが…樋川が俺の腕を掴んだ。




「落ち着くんだ…御堂少佐」


「しかし…」


樋川が足早に飛び出そうとした俺を制する。


「…もう少し…様子を見るんだ…」


微塵の迷いもない樋川の声。



「逃げられたら…どうするんだ?」



「「!!?」」


鳥居で羽根を休めていた鵺が拝殿に潜む俺たちの姿に気づいた。


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