東京ロマネスク~冷酷な将校の殉愛~《完》
彼女の父親は軍医の栗原中尉と同じ苗字。


栗原中尉の子孫か?



千愛さんと同様に父親も俺の傷を善意で診察してくれた。



「記憶喪失とは…困ったんもんだな」


千愛さんには記憶喪失の振りをしろと言われ…振りをしたがこれで良かったのだろうか?



診察を終え、父親は帰宅。


俺と千愛さんの二人になった。



椿に瓜二つの女。


彼女を見ていると94年前の時代に置いてきた身重の椿が思い出す。




「椿さんの事…思い出してるの?」


「いや…別に…夜空の星のような街に見惚れてただけだ…」


俺は硝子越しに見える夜の街に目をわざと凝らした。












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