東京ロマネスク~冷酷な将校の殉愛~《完》
「独り身の女性に身体を洗わせるなんて・・・すまぬ」



俺は腰にタオルを巻き、ふろ椅子に座った。

千愛さんが粗めのタオルに石鹸を泡立てて、俺の背中に擦りつける。


「94年前の世界とは違い…いろんなモノがあるんだな」



「…冷蔵庫も洗濯機もないなんて…昔の人は大変だったわね」



「…千愛さんは…平然と男性の裸体を見ているが…恥かしくはないのか?」



「別に…見慣れてるし」



「…腰が軽いのか…」


「あ…私は…唯…好きな人に釣り合う女性になりたくて…でも、彼には…」



千愛さんは言葉尻を濁して手を止めた。



「余計な事を訊いてしまった…すまぬ」


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