東京ロマネスク~冷酷な将校の殉愛~《完》

ー椿side-

お腹に宿した子も順調に育っていた。


時々…悪阻で気分が悪くなるけど、子の為だと思い堪える。



「…ただいま…戻ったぞ…椿」


寝室のベットで横になっていた私は征史さんを玄関でお迎えする事が出来なかった。



「申し訳ありません」



慌てて、身体を起こして謝った。



「悪阻で気分が悪いんだろ?構わん」



征史さんは上着を脱ぎ、着替えを始める。



「身重になってから…色々と妻としての役目を果たせなくて申し訳ありません」


私は謝る事しか出来なかった。

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