東京ロマネスク~冷酷な将校の殉愛~《完》
5幕 冷酷ナ言ノ葉
ー椿side-
私は中尉殿に押し付けられたロシアケーキを口にした。
「美味しいです…」
「ふっ」
中尉殿は満足げな含み笑いを口許に湛えて、肘掛け椅子の背凭れに背中を押し付けた。
彼の背後には大きなグレーの大理石のマントルピースが重厚な雰囲気を漂わせる。
足を組み、威圧的な彼の態度。
彼がこの屋敷の当主のような見えてしまう。
黄土色の軍服。
上着の襟章と雨蓋は造形美に凝った仕上げになっていた。
強く括れた腰元…丈が短い分、足が長く見える。
「あの…」
「何だ?」
素っ気ない低い声。
「美味しいです…」
「ふっ」
中尉殿は満足げな含み笑いを口許に湛えて、肘掛け椅子の背凭れに背中を押し付けた。
彼の背後には大きなグレーの大理石のマントルピースが重厚な雰囲気を漂わせる。
足を組み、威圧的な彼の態度。
彼がこの屋敷の当主のような見えてしまう。
黄土色の軍服。
上着の襟章と雨蓋は造形美に凝った仕上げになっていた。
強く括れた腰元…丈が短い分、足が長く見える。
「あの…」
「何だ?」
素っ気ない低い声。