東京ロマネスク~冷酷な将校の殉愛~《完》
「美味しいです…」


「…ふっ」


中尉殿は珈琲を飲むだけで、ショコラには手をつけない。



「中尉殿もお一つ…いかがですか?」



「…その菓子は貴様に持って来た菓子だ。俺は食べぬ」



「…でも、私一人では食べきれません…」



「…そうか…なら仕方があるまい。一つ頂こう」



中尉殿は一つだけショコラを摘まんだ。

そして、口へと運んだ。

「…甘い…」


彼の率直とも言える感想が漏れる。






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