東京ロマネスク~冷酷な将校の殉愛~《完》
「さすがは魔性の女子だな。男を取り入るのがお上手だな…」



「私は別に…」



中尉殿は祝言の席でも私を意地悪く詰って来る。



彼にそっぽを向き、父に顔を向けた。



お父様は佐助叔父様の借金の返済の為に鎌倉の別荘を残し、一文無しとなった。



御堂陸相の計らいで…お父様は鎌倉の別荘に住む事に。


政治の世界から退き、隠居する。



私は帰る場所を失い、隣に座る冷血な男の庇護の中で暮らすしかない。



彼は盃の酒を煽り、気難しげに眉間に皺を寄せる。






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