東京ロマネスク~冷酷な将校の殉愛~《完》
これでは『灰かぶり姫』だーーー・・・



意外と窓拭きは重労働で、自然と息が上がって汗の玉が背中に滲み出す。




笑顔で窓を拭いていた秋もこんな風に辛い思いしていたんだ。



私は何て…楽な生き方をしていたんだろう…




「何してるの?」



応接間から姿を消した定子さんと入れ違いに次男の清史さんが入って来た。



「おはようございます…清史さん」



清史さんは訝しげに私を見つめる。



「嫡男の嫁である椿さんが…何故、窓拭きなんてしてるの?」



「それは・・・」



「兄上の命令?」

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