東京ロマネスク~冷酷な将校の殉愛~《完》
「今度…帝国劇場で6月に演劇が上演させるらしい」



「へぇ~っ。演劇ですか…私…一度もまだ、演劇は観に行った事ないんです」



二人で応接のソファーに座り、和訳された小説の話で盛り上がる。


清史さんは修学院中等科2年生14歳。



生まれつき身体が弱いと征史さんから訊いていた。



「兄上にお願いすれば観に連れて行ってくれるよ…兄上はお優しい人だから…」



「優しい?征史さんが?」



私には命令口調で冷血な表情しか見せない。



でも、優しい所作は垣間見れるけど…



優しいと清史さんのように断言は出来ない。



時が経てば…征史さんも清史さんと同じように私に対しても、優しい態度で接してくれるのかな?


< 79 / 300 >

この作品をシェア

pagetop