上々、花日和
日本人向けの観光地、そう思い込んでいたのだが、そうでもない。
日本人やアジアの人々は見かけるものの、そればかりではない。
バスは最後の目的地、免税店へ……
ロビーには買い物に飽きた家族の姿、あれはどこよとはしゃぐ人のほとんどが日本人。
欲しいもの、見たいものは私にとって皆無に等しい。
「…好きじゃないんだよなぁ…」
「ぷっ」
ポツリ吐き出した言葉を聞いていた人がいた。
「わっ、な、永富さん!?」
「表、出ます?」
永富さんに誘われ、正面入口横の喫煙所に向かう。
「ハワイは初めて?」
タバコを吸ってもいいですか?のしぐさで、私はいいですよと頷いて、永富さんはタバコに火を点ける。
喫煙所にもひと休み中の人がたくさんいる。
「あっ、ハイ」
ぼんやり考えてしまって、ハワイは初めて?の質問の返事が遅れた。
「そっかー、きっと病みつきになっちゃうよー」
免税店前の一方通行の道路は絶え間なく色とりどりのバスが通る。
「異国の雰囲気は好きです。でも、ここら辺は苦手かなあ」
リゾート地とは言え、ここは都会だ。
観光目当ての都会。ワイキキビーチがすぐ近いのに、海の気配がしない。
「そうなんだ」
プカプカと煙を吐きながら永富さんの目線は少し上向き。
「伊東さん、お酒とか大丈夫な人?」
「大丈夫ですよ」
「じゃあ、チェックインが済んだらビール飲みに行きません?」
「あっ、えっと…」
「予定とか組んじゃってるならいいんだけど」
予定…ありません。
「な、いです…」
「じゃ、決まり!」
16時半にロビーで待ち合わせになった。