上々、花日和
カタマランと呼ばれるヨットは細長い船が二つ並んで、その上に甲板があり帆がそびえている。
ゆらりゆらりクルーズするのかと思いきや…
「ぎゃーーー」
超高速…同乗していた欧米の人々は煽るように大騒ぎ。
優雅のかけらもない。けど…
「楽しいっ!」
沖からダイヤモンドヘッドが見えたり、ホテルの群が小さくなっていく。
海にはクルーズ船やヨットにカヌーがいっぱいで、オアフ島のサンセットを心待ちにしているかのよう。
ただ、ワイキキビーチからは日没は見ることができない。それでもオレンジ色の夕暮れがすぐそこにある。
私もサンセットに酔いしれようとしていた…のに…
「うっ」
見事に船酔いしてしまった。
「伊東さんっ、大丈夫っ」
「おっ、おえー」
どのくらい乗車していたのか、自分が今どこにいるのか分からないくらいの船酔い。夕暮れも終わり夜になっていた。
「伊東さん大丈夫?」
全てを戻し終えた私は意外にも爽快な気持ちになっていた。
「大丈夫です。すみません、みっともないところを見せてしまって」
爽快感とは裏腹に一部始終を見られていた永富さんには重い気持ちでいっぱいである。
「問題ないよ。でも本当に大丈夫?」
「平気です…って言うか!…あの人たちも永富さんも狂ってる!!なんで平気なの!?」
「……」
一瞬ヒヤリとした表情の永富さんだったが、私がニヤリ笑うとホッとして二人で大笑いした。