上々、花日和


「眠れた?」

「はい、ぐっすりと」

じゃあ行こうか、と玄関に出ると永富さんが借りたと思われるレンタカーが停まっていた。

「オープンカーとかじゃないけど」

「いえいえ、全然問題ないですよ」

右側のドアを開けてくれた。そうか左ハンドルだった。

「じゃあ、出発」

「はい」

不慣れな右車線走行に助手席にいながら感覚がおかしくなる。

左右に広がる初めての景色をキョロキョロ見てしまう。

車は西に向かい、スーパーマーケットに入る。
友人とパーティーするための食料を持って行くんだって。

「わあー」

私は店内に入って驚いた。
豊富で色とりどりの野菜にフルーツ。食料品のパッケージが日本とはまるで違う。

嘘みたいにど派手なデコレーションがしてあるケーキ、数リットルはあるであろう持ち手のある牛乳、サイズが大きすぎるピザピザピザ!


「ぷっ、ハナちゃん可愛いね」

クスッと笑う永富さんの言葉にハッと我に返る。

「あっ」

お恥ずかしい…異国のマーケットにテンションが急上昇してしまったんですよ。

「いやあ、やっぱり女の子だな」

きっと私の顔は真っ赤だと思う。

「…」

「大丈夫、大丈夫。ゆっくり見てきて。俺は適当に選んでいるから」

「あっ、いえ平気です」

ノコノコ永富さんの後ろをついて行く。

「ちゃんと言わないと」

カートを押す永富さんが言う。

「今、したいこと見つけたならちゃんと言わないと」

「…」

「ハワイにはそういう瞬間がたくさんあるから」

ニコリと笑顔を永富さんは見せてくれた。

目に少しかかる髪は黒髪でスッキリと顎のラインが美しい人だ。笑うと甘いのに、真剣な眼差しにはドキッとする。

「うん」


佑香のいつもの押しでやって来た感じでいたけど、旅を決めていたのはいつも自分だから。
楽しまないと…ね。
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