上々、花日和
荷物をキッチンに置いて、アウトドア用の大きなクーラーボックスを洗う。そのあと買ってきた氷を入れ、食材を入れる。
「ずっと来ていないからさ、冷蔵庫の電源入れていないんだ」
俺んち、だからもちろん勝手はわかっている永富さん。
「なるほど」
食材をクーラーボックスに詰め込んだ後は、久しぶりに訪れた家の空気を入れ替える。
リビングの窓を開けると海風が家に入り込む。
「海だ!」
大きな窓の向こうには海があった。
今朝のホテルのカーテンと同じように淡いブルーのカーテンが踊る。
「二階の窓も開けてくるよ」
そう言って永富さんは二階へと向かう。
私は辺りを眺める。
生活感は最低限にしてあるけど、白い壁にテーブルにソファーがある。
古い時計はもともとアンティークだからかな、2時14分くらいで止まっている。誰も…住んでいないのかな?
壁にはアメリカらしい家族の写真。
ひとつの写真に目が止まる。
卒業式の写真で永富さんらしき人が写っている。
「若いでしょ?」
二階から降りてきた永富さん。
「大学卒業まではずっとこっちにいてさ」
「へぇ」
私が疑問に思っていたことを永富さんは次々と話してくれる。
「卒業後は日本の会社に就職して、時々こっち来るって感じ」
「家族は?」
「俺が日本に戻ったあと、全員日本に。まあ、親父と兄貴はそれまでも行ったり来たりだったけど」
「すごいなあ」
私なんて海が近くにあるところに住んだことがないから、こんなにも海が間近にある生活が不思議に思える。
「外行って話そうか」
家の中にあるソファーを永富さんは軽々と持ち上げてベランダに出す。