SS男子の落とし方
『前に貸した本あるだろ?
あれをさ、始業式に持って来てくんねぇ?』


「晋也さんの本のこと?」

そういえば、借りたままだった。


『そうそう。
本当はもう使う予定無かったんだけど、あの馬鹿が何故か要るみてぇで。』


「分かった。
うっかりしてて、返すの忘れてごめんね?」


『本当なら俺が取りに行ってやっても良いんだけど、空いてる日がねぇからな...
かと言って、馬鹿に任せるのも危ねえしな。』


「それって私が危ないの?」


『は?
勿論、兄貴が。何度も言わせるな。

重くて悪りぃけど、頼んだ。』


「うん、頼まれた。」


じゃあな、と電話を切ろうとする咲也君を「待って!」と思わず引き止めた。


訊いても良いのかな?

何も聞こえない携帯に耳を当てながら、考えた。

多分、咲也君は待ってくれている。
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