嘘と微熱と甘い罠
「とりあえず、飯食いに行こうぜ。
俺、午後から営業部と打ち合わせなんだよ」
相良はため息混じりに声出した。
…ん?ちょっと待って。
今、「午後から打ち合わせ」って言った?
んー、と背中を伸ばした相良は。
もうすでに歩き出している。
私はその背中を追いかけた。
「ちょっと!!外回りじゃなかったの!?」
「んなもんねぇよ」
「はぁっ!?なにそれ!!」
「そうでも言わなきゃお前、俺から逃げただろ?」
「うっ…」
当たらずとも遠からず。
相良、侮れないな…。
「意外にわかりやすいからな、お前」
「…う、うるさいっ」
「ほら、行くぞ」
「あ、待って!!」
目を細めて笑みを浮かべた相良に。
小さく、小さく。
心臓がトクン、と揺れた。