嘘と微熱と甘い罠
それとほぼ同時。
「相良くーん、ビールでいーい?」
「あー、悪い」
「あ、料理もとるよぉ」
私の視界の端に入ったのは。
必要以上に相良と距離をつめる総務部の女の子。
耳に入ってきたのは。
砂糖菓子みたいな甘ったるい声と、相良の返事。
いつもなら気にもならない光景なのに。
…イライラする。
あの甘ったるい声に、返事をした相良。
それだけなのにイライラする。
「天沢ぁ、相良が浮気してんぞー?」
「うるさいっ!!」
「相良ぁ、天沢の機嫌が悪いぞー」
「余計なこと言うなっ!!」
他の同僚のからかう声も。
今はイライラという火に油を注ぐようなものだった。