嘘と微熱と甘い罠

それとほぼ同時。





「相良くーん、ビールでいーい?」

「あー、悪い」

「あ、料理もとるよぉ」





私の視界の端に入ったのは。

必要以上に相良と距離をつめる総務部の女の子。

耳に入ってきたのは。

砂糖菓子みたいな甘ったるい声と、相良の返事。





いつもなら気にもならない光景なのに。

…イライラする。

あの甘ったるい声に、返事をした相良。

それだけなのにイライラする。





「天沢ぁ、相良が浮気してんぞー?」

「うるさいっ!!」

「相良ぁ、天沢の機嫌が悪いぞー」

「余計なこと言うなっ!!」





他の同僚のからかう声も。

今はイライラという火に油を注ぐようなものだった。



< 112 / 325 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop