嘘と微熱と甘い罠
…なによ、デレデレデレデレ。
鼻の下伸ばしちゃって。
いかにも相良に気があります、みたいな。
いつもなら相手にしないじゃない。
いつもなら気にもならない光景なのに。
…イライラする。
あの甘ったるい声に、返事をした相良。
それだけなのにイライラする。
でも。
私にどうこう言える権利はないのだ。
イライラ任せにジョッキの中身を飲み干すと。
ダンッと音をたててテーブルに叩きつけるように置いた。
「ど…どうした…?」
「うるさいっ!!」
総務の女の子にデレデレしてる相良の姿なんて。
これ以上見たくない。
ジョッキを置いた音にビクッとしてる隣の人間には。
半ば八つ当たりをして。
私はそのまま立ち上がった。