嘘と微熱と甘い罠
グイッ。
「…ッ!?」
レストルームを出て、みんながいるところへ戻ろうと足を向けたとき。
後ろ側に腕を引かれた。
ちょっ…誰っ!?
私、拉致される覚えなんてないんですけど!?
「…なにご機嫌ナナメってんだよ」
「な…っ!!」
後ろ手に引かれ、クルリと半回転。
背中には壁、顔の横にはワイシャツの袖を捲った腕。
そして、目の前には。
目を細めて唇の端っこを意地悪そうに持ち上げた相良の顔…。
「だ、誰がご機嫌ナナメ…」
「ナナメだろ?こっち見てたくせに、目も合わせようとしねぇしな」
見てたの、気づかれてた…。
相良の言葉に。
恥ずかしさで全身が沸いてきた熱に覆われた。