嘘と微熱と甘い罠
何やってんだろ、私…。
誰もいない隣の席を横目にため息を吐いた。
「妬いてんの?」なんて相良は聞いたけど。
なんで私が相良相手に妬かなきゃならないのよ。
頭沸いちゃってんじゃないの!?
少し前ならなにも考えずにそう答えられた。
でも今は…。
私はそっと首元に手をあてた。
計算済みなのか、偶然の産物なのか。
この間の飲み会でつけられたこの首元の花は。
あえて隠さなきゃならない位置にはなくて。
普通にしていれば服で隠れて見えない。
でも。
私はそこにあるのも残された感覚も知っている。
…ダメダメ、余計なこと考えちゃ。
私には笠原さんがいるんだから。
ブンブン、と邪念を払うように頭を振ると。
「仕事、仕事」と、呟いて。
私はまたパソコンと向かい合った。