嘘と微熱と甘い罠
「ふぅ…」
カフェスペースで一休憩。
コラボ企画の方は先方が気に入ってくれたから。
話がうまく進んでいる。
ここからは先方がこの案件の中心になるから。
私自身はちょっと落ち着くはず。
…課長が変な仕事振ってこなければの話、だけど。
コーヒーを飲み終えて、缶をゴミ箱に捨てていると。
後ろから声をかけられた。
「お疲れさん」
「あ…お疲れさまです…」
会議室にでもいたのだろうか。
何冊かファイルを抱えた笠原さんが自販機に近づいて来た。
そして。
チャリチャリと小銭を自販機に入れながら言葉を発した。
「…今夜、残業?」
「え…?」
「飯でもどう?」
笠原さんからのお誘いはいつも突然。
こんな風に約束しても、いつもドタキャンだ。
そんな思いが顔に出てたのか。
笠原さんは苦笑混じりに言葉を続けた。
「仕事、落ち着いたから大丈夫だよ」