嘘と微熱と甘い罠
でも。
少し前のように喜べなかった。
「さ、相良と約束してるんで、一緒でいいですか…っ!?」
嘘。
相良と約束なんてしてない。
しかも。
彼氏に誘われてんのに他の男も一緒にってどうなのよ?
私、最低だ。
でも。
笠原さんと2人きりになればご飯の後は流れが決まってる。
相良がいれば。
それはどうにか回避できるかもしれない。
「…相良?」
「う、打ち合わせついでに飲みに行こうって話してたんです」
あぁ、嘘の上塗り。
今、一緒に仕事してないんだから打ち合わせなんてあるわけないんだよーっ。
背中には嫌な汗がツツッと滑るけど。
ここまできたら退くわけにもいかず。
「…じゃあ店決まったら連絡して」
ポンポン、と私の頭に手をのせると。
笠原さんはカフェスペースから出ていった。